クリエイター講座2017作品
【おぐさんち 小倉直樹さん・厚子さん】

富士見町の南に位置する入笠山のふもとの住宅街に、築200年の古民家カフェ「おぐさんち」はあります。

小倉直樹さんと厚子さん夫婦が営む「おぐさんち」は、現代の建物にはない独特の風合いや温かみを持っており、初めて来たのにどこか懐かしさを感じます。店内には、娘さんの描いた絵や、息子さんが作った作品(入口のドアは息子さん作!)などが多く飾られ、お店というより人の家にお邪魔しているような錯覚を覚えます。

厚子さんが完全予約制で一から作る料理は、お店の雰囲気にぴったりなどこかほっとする味が特徴。直樹さんは、「チェーン店では味わえない総菜ばかり。奥さんの家庭料理をぜひ味わってほしい」と厚子さんの料理に自信ありの様子です。

愛知県で会社員として働いていたときから、飲食店を経営したいと考えていた直樹さんは、中古で安く買うことができ、自分の理想とする間取りに少しでも近い古民家を探し始めました。全国各地から資料を取り寄せ、時には現地に赴きました。なかなか理想の古民家を見つけられないまま10年という月日が経過したある日、富士見町にある古民家を知りました。それまで富士見町を知らなかった直樹さんですが、都心からほど近い距離にあること、また物件のシンプルな造りなどが気に入り、実際に訪れてみることにしました。「実際に見に行ってみると、長野の山の景色に魅了されました。アルプスの荒々しさっていうのは、他にはなかなかない」。ほかにも、古民家の歴史的背景なども直樹さんの心をつかみ、富士見町への移住を決意しました。

理想の生活に突き進んでいく直樹さん。そんな直樹さんを、厚子さんは温かく見守り、寄り添いました。「結婚して40年くらい、一度も離れたことがないんですよ。空気みたいな生きていくうえで重要な存在で、なくてはならない人なんです」。以前住んでいた名古屋からも、厚子さんの地元の広島からも遠く離れ、冬の厳しい長野での古民家暮らしは、最初は後悔の連続だったそうです。「寒さにいやになると、名古屋に遊びに行っていました。温かいし、おいしいお店もたくさんあるし、何をするにも事欠かない。でも信州の山には勝てないんです」。そう、厚子さんの心を掴んだのもまた、長野の山だったのです。春の新緑の美しさ、秋の紅葉、冬の雪山…。四季のうつろいを感じる中で、この生活が素敵なものだと気づきました。

オープンしたてのころは、馬車馬のように働いていた小倉さん夫婦。テレビに出たこともあり、多忙を極めていました。「そうしているうちに、二人とも体を壊しちゃって。いろんなメニューがあったんですけど、うちでしか味わえないような料理を、しっかり時間をかけて作ったほうがお客さんとも向き合えると思いました」。
体調を整えるために少しの間休業し、その後、完全予約制で信州の野菜をふんだんに使った、おぐさんちならではの料理を提供するスタイルに変更しました。

ゆとりを持った現在の暮らしを「幸せ」だと口をそろえる二人。信州の山に見守られながら、おぐさんちの暮らしは続きます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です